PLEASURE/TREASURE

○175
テーマA:「ラジオ」「上昇気流」「反比例」
「えっと、『ヨシノ中央公園の滑り台の下』だから――。あったあった! オンバット、こっちだ!」
 午前十時三十分。
 ポケモンや人間達が思い思いに過ごしているヨシノシティ中央公園。そこでカズヤは後ろを飛ぶ相棒のオンバットを呼んだ。
 サザンドラをモチーフとした三つ叉の滑り台に向かって指をさす。滑り台下の空洞には、小さなオレンジ色の箱が置いてあった。
「宝物ってこれのことだよな?」
 確認するようにカズヤが問うと、オンバットは頷いた。
「よし、じゃあ宝物一個目ゲット!」
 箱を手に取り、オンバットと一緒に中をのぞき込む。
 入っていたのは、フエンせんべいが二枚と、「10」と書かれた小さな紙だった。
「十点かあ――。でも、とりあえずやったな!」
 オンバットとハイタッチを交わし、ふたりは喜びの声を上げた。
 公園のベンチに並んで座り、手に入れたばかりのフエンせんべいを頬張る。そうしながら、カズヤはポケギアのラジオの電源を点けた。しばらくのノイズの後、若いアナウンサーの声が聞こえてくる。
『ただいまE-4の宝物がゲットされました! 次々とお宝が見つけられているみたいですね! さて、今回はスコアトレジャーにはじめて参加するという方も多いと聞いていますので、ここでルールの再確認をしましょう』
 初心者へ向けてアナウンサーがルールの解説を始める。それに合わせ、イベントに初めて参加するカズヤ達も、休憩を兼ねて聞くことにした。
 カズヤとオンバットが参加しているのは『スコアトレジャー』というイベント。立ち寄ったポケモンセンターで、飛び入り可の宝探し大会があると聞き、こうして参加しているのだった。
 その宝探しというのが少し変わったルールだった。
 まずスタート時刻前に、参加者全員へヨシノ市街地を含むA4サイズの地図が配られる。地図は縦六マス、横五マスの計三十マスに区切られており、縦はAからF、横は1から5と記号が振られていた。地図には建物や道などの人工特徴物のほか、等高線や岩、崖などの地形的特徴物が記されている。
 この地図を用いて宝探しをするわけだが、どこに宝が隠されているか。それは地図には書かれていない。ラジオが不定期に位置座表を発表する。今イベントはラジオヨシノが協力をしており、そのチャンネルを聞けば、いつでも情報を得ることができるのだった。
 ヒントを元に見事一番に宝物を見つけることができたら、中に入っている景品と点数を手に入れることができる。もし発見が一番でなくとも、その地点に行けば若干の点数をもらえる。
『なお、宝物が見つけにくいほど、点数は高くなります。つまりは、見つけやすさと得点が反比例するわけですね! 見つけやすさを重視してこつこつ点を稼ぐか、それとも見つけにくいお宝をゲットして一発逆転を狙うか。それぞれの戦略も問われますね』
 これに関してカズヤ達は、近い場所から探しに行くという作戦でいくつもりだった。
 ポケギアを膝の上に乗せて、地図を広げる。ラジオでは新しい宝の在処が発表されていた。
『それでは教えますよ! まずは一つ目――』
 読み上げられた座標と位置説明を地図に記していく。プロットした印の一つをカズヤがペンで指す。
「この場所、ここからそんなに遠くないし行ってみるか」
 位置説明は「岩と岩の間」。地図曰く、街を北に出てすぐのところに岩石地帯があるらしい。そこをくまなく探せば、お宝を一番に見つけられるかもしれない。そうと決めると、カズヤとオンバットは目当ての場所へ移動していった。

「まじ……かよ」
 目的地についたカズヤは目の前の光景に呆然とする。宝物は岩と岩の間にある。だから岩の間を一つ一つ見ていけばよいと思っていたのだが、
「岩だらけじゃねえか……」
 大小さまざまな岩が乱立し、一つ一つ探していたのでは時間がかかりすぎてしまう。それでも運良く見つけられる可能性に賭け、カズヤはオンバットを連れて走り出す。
「どこだろう……」
「全然見つかんねえ……」
 カズヤより先に到着していた参加者達はかなり苦労しているようで、うろうろと岩の間をさまよっている。その中で一匹だけ、軽快に走るポケモンの姿があった。
 がんこうポケモン、レントラーだ。
 背中にそのトレーナーを乗せ、わき目もふらず岩の間を駆け抜けていく。やがてある場所で止まると、レントラーががうと短く吼えた。レントラーの声を聞き、若い女性トレーナーが背中から飛び降りる。彼女の足下にはオレンジ色の箱が落ちており、それを拾い上げる。直後、つけっぱなしにしていたポケギアラジオからアナウンサーの声が聞こえる。
『ただいまC-4エリアのお宝がゲットされました! なかなか難しい課題でしたがリイナ&レントラーペアが獲得しました。これは高ポイントが期待できそうです!』
 カズヤ周辺とラジオが盛り上がる中、リイナはレントラーの首に抱きついていた。
「レントラーのおかげだよ! やったね、だいすき!」
 喜ぶリイナと抱きつかれて照れているふたりの様子を見ていると、相性がとても良いのだとわかる。どうして迷わずに宝を見つけられたのだろうと、カズヤが考えている間に、リイナとレントラーは次の目的地へと走り去ってしまった。
「俺たちも次に行くぞ、オンバット!」
 宝の発見ポイントだけを手に入れ、カズヤとオンバットも次に近い場所へ走っていく。その後いくつかポイント巡ったが、すべて誰かに先を越されてしまい、宝物を手に入れることはできなかった。
 やがて昼時になり、カズヤ達は一度市街地に帰ってきた。参加賞として弁当券がついていたので、商店街で交換をして近くの公園でそれを広げる。
 野菜炒めに卵焼き、どれから食べようかと迷っていると、隣のベンチに女性のトレーナーが腰掛けた。その足下でレントラーも体を休める。その組み合わせには見覚えがあった。
「あ、さっきの岩場で取った人」
 そう呟くとリイナが反応した。
「ん? あ! あなたもスコアトレジャーに参加してる人?」
 彼女の問いかけにカズヤは縦に頷く。午前を走っただけでもくたくたなカズヤに対し、リイナはまだまだ元気という様子で関心をする。
「今日はそんなに暑くなくて良かったよ。林エリアを主に回ってたのもあるし、午後も頑張れちゃいそう。その、ちょっとは、レントラーの背中に乗せてもらったけど」
 リイナの言葉に、ちょっとじゃないだろと言いたげにレントラーがため息をつく。
「そっちのお兄さんとオンバットは、参加が初めてかな?」
「え、ああ。『初めて』ってことは、こういうイベントって他にもあるのか?」
「あんまり目立たないけど、実は色々なところでやってるのよ。前はアサギだったし、その前はチョウジだったかしら。私も結構参加してるわ。上位に入ると豪華な特産品がもらえることもあるし」
 前のいかりまんじゅうセットはおいしかったよね、とレントラーと頷き合う。町おこしも兼ねて行われることも多いようだった。リイナの場合、何回も参加しているうちに、自分なりの効率の良い回り方を見つけられたらしい。そんな彼女にカズヤは思い切って尋ねてみた。
「俺たちにアドバイスもらえないかな? 他の人が見つけた宝でポイントを取るのもいいけど、やっぱり自分で見つけたくて」
 そうだなあ、とリイナが少し考える。そして人差し指を立てて彼女はウインクをした。
「じゃあ一個だけ教えてあげる。あなた、私たちが岩と岩の間の宝物を取るところ見たのよね。そのときどう思った?」
「他の人が全員見つけられてないのに、一人だけまっすぐ進んでて、しかも宝物を捜し当ててすごいと思った」
「ありがとう。でね、あれって当てずっぽうで向かってたわけじゃないの。この子のおかげなんだ」
 そう言ってリイナはレントラーの頭を撫でる。
「レントラーの能力は知ってる?」
 聞かれてカズヤはレントラーの知識を頭の奥から引っ張り出す。
「コリンクの最終進化で、電気タイプで――透視能力があるんだっけか」
「そう、それ! 岩場の入り口でレントラーに透視を使ってもらったの。視界を遮られるような地形でもレントラーの力があれば、ある程度はその奥が見えてしまうの。で、隠された宝物を見つけたらあとは一直線、っていうわけ」
「なるほどな……。でも透視なんて俺たちには無理だけど……」
「私が言いたいのはそっちじゃないわ。このイベント、走力と知識で捜し当てる宝もあるんだけど、一方でポケモンの特性を使うと簡単に見つけられるものもあるの。どこで使えばいいのかは慣れになるけど――でも覚えておいて損はないと思うよ」
「オンバットの特性かあ。ありがとう。参考にさせてもらうよ」
「どういたしまして。それじゃあ午後も頑張ってね。私も手を抜く気はないけど、応援してるわ」
 気がつけば弁当を食べ終えていたリイナが荷物を畳みレントラーの背にまたがる。そのときラジオから次の宝の在処が発表された。
『さあ本イベントも後半戦! みなさん順調ですか? それではまずは一つ目、A-4〔鞍部〕です!』
「あん……ぶ?」
 いきなり飛び出た聞き馴れない単語にカズヤは首を傾げる。漢字すらどうやって書くのか思い浮かばない。悩むカズヤにリイナがレントラーの背中から振り返って声をかける。
「鞍の部分って書いて鞍部よ。斜面の頂上と頂上の間のちょっとくぼんだ部分をそう呼ぶの。地形図の読み方も学んでおくと候補も絞れるから、次にもし参加する機会があれば覚えておくといいわ。それじゃあ、ファイト!」
 最後に一つアドバイスを残してリイナ・レントラー組は去っていった。場所を聞いただけで走り始めたから、とりあえず北を目指し、レントラーの背中でリイナが地図読みをし、方向修正をするのだろう。今の自分には到底できなさそうな業だ。
 カズヤ達も行く方向を決め移動し始める。今はまだ知らないことがたくさんあるが、不快な感じはしなかった。知らないことを自分の目と足とそして相棒とともに探していくこの感覚は、むしろはまってしまいそうなぐらいだった。

「さて、目当ての場所の近くには来たけれど……」
 今回の位置説明は『道の終わり』。それだけを聞けば単純なものだったが、カズヤとオンバットは仲良く息を呑んでいた。
「道の終わりって、これいくつあるんだよ……」
 ふたりの目の前にあるのは洞窟の入り口。ここから幾重にも道が枝分かれし、そのうちの一つに宝物があるのだという。迷ったときは洞窟内に待機しているエスパーポケモンがテレポートで入り口まで飛ばしてくれるらしいが、大きな時間ロスになるのは間違いない。
「どうするオンバット?」
 自信の薄いカズヤの問いかけに、オンバットは任せろというように胸を張る。その様子にカズヤも頷き洞窟内へ飛び込んでいった。
 元々この洞窟は、知る人ぞ知る隠れた観光地だったらしく、薄い明かりが点々と道沿いに設置されていた。そのおかげで人間の目でも頭をぶつけることなく進むことができる。それでも道の先は真っ暗で、どっちへ進めば正解なのかはわからない。道の終わりに物が落ちているかどうかだけ確認できればいいのだけれど……。と、思ったところで、カズヤはオンバットを見上げた。
「そうだ、超音波!」
 そう言うとオンバットは得意気に「ね、任せてと言ったでしょ?」とカズヤにウインクをした。道の分岐までたどり着きオンバットは耳から超音波を放つ。返ってきた情報を頭の中で整理し組み立てる。オンバットは道の先へ爪を向けこっちだと鳴いた。
「見つけたか!?」
 もちろんと自信を持って答え、オンバットが先導する。何度か超音波を発し、一度も外れることもなく道の突き当たりに到着した。足下には朝に見つけた物と同じ、本日二つ目となる未開封のオレンジ色の箱が落ちていた。
「これは……!」
 箱を持ち上げて喜んでオンバットに見せる。オンバットは、早く開けなよと言うように箱の蓋を翼でつついた。
 嬉しさの震えを抑えて箱を開ける。中に入っていたのは、「145」と書かれた紙と、丸い飴玉が二つ入っていた。なかなか手に入らない珍しい道具、ふしぎなアメだった。箱を開けると運営に通知が行く仕組みなのか、すぐにラジオの放送が入る。
『洞窟エリアのお宝がたった今ゲットされました。おめでとうございます!』
 こうして自分のことがラジオで取り上げられると、体がこそばゆくなってくる。けれどそのくすぐったさは心地よく、なによりも相棒のオンバットと達成できたのが嬉しかった。放送を聞きながらカズヤは跳びながらオンバットとハイタッチを交わした。
『さあいよいよイベントも終盤戦。残るお宝もあと少し。イベント終了時刻の四時になるか、お宝が全てゲットされたら放送でお知らせしますので、最後まで宝探しを楽しんでくださいね!』
「終了時刻になるか、宝が全部ゲットされるまでか。まだ時間はあるな」
 宝の側にいたケーシィのテレポートでカズヤとオンバットは洞窟入り口にまで飛ばしてもらった。ふしぎなアメをそれぞれ一つずつ口に入れてから、地図を広げる。一日中走り続けるなんて、普段の冒険ですらやったことがないが、まだまだ走ることができそうだ。飛び込んだイベントで見つけた楽しさ。最後まで楽しみきらなければもったいない。
「まだいけるよな!」
 もちろん! と相方の心強い返事が返ってくる。その声があれば、足はまだ止まりそうになかった。

 残り時間はあと三十分ほど。そして残る宝もあと一ヶ所だった。
 未舗装の道を、残る力を振り絞って駆け抜ける。見通しの良い林の奥では同じように宝を目指して走る参加者の姿が見て取れた。
『さあ、残る一エリアの宝を目指して、参加者が続々とA-1エリアに集まってきています! 宝の位置は〔岩崖の上〕。いち早く手に入れるのは誰になるのでしょうか!?』
 ラジオの方も今日一番の盛り上がりになっており、それを聞いているだけで足が早まってくる。地図上に岩崖が描かれているのは一ヶ所しかなかった。そこを目指すために林を抜け――、
 眼前に現れたのは深い谷だった。両岸を分かつように、深さ十数メートルの亀裂が入り、底では川が飛沫を上げて流れている。幅は少なくとも五十メートルはありそうで、柱状の岩が点々と谷底からそびえ立っていた。対岸は岩が露出した地形になっており、岩崖が何段にも重なって形成されている。高いところではこちら側より二百メートル向こう側に渡るためのつり橋はあるが、下から吹き上げる上昇気流でゆらゆらと揺れていた。
「このどこかに宝が……」
 視線を左右に巡らせて宝のありかを探そうとする。岩崖がいくつもあるため、特定をしてから移動をしたいが、箱のオレンジ色は、岩の色と同化して遠目からではわからない。オンバットに空から探してもらおうとすると、彼は口をもごもごと動かしていた。
「オンバット、もしかしてまだふしぎなアメを舐めてるのか?」
 カズヤは癖で噛み砕いて既に食べてしまったのだが、オンバットはその味が気に入ったらしく口の中で転がしているようだった。
「喉に詰まらせるなよ」
 マイペースだなと首を振っていると、隣で声がした。
「あった……!」
 弾かれたように横を見れば、そこにいたのはリイナとレントラーだった。レントラーの目が光っているのは透視能力を使っているからだろう。その視線の先、対岸の橋の終点から二段下がった岩崖の上に宝箱が落ちていた。あそこへ行くにはまずつり橋を渡り、そこから慎重に一段一メートルほどの岩崖の段差を下りていかなければならない。
 一番に見つけた彼女が飛び出すのかと思いきや、リイナはレントラーから降りてその場に腰を下ろした。
「行かないのか?」
 カズヤが尋ねるとリイナは残念そうに苦笑いをして答えた。
「できれば行きたいんだけどね。あのつり橋すごく揺れるし、私もレントラーも高いところは苦手でさ。これはさすがにパスかな。めいっぱい楽しんだし、あとはここで見学させてもらうよ」
 隣のレントラーも残念そうに首を振る。無理のしすぎで台無しになってしまうのもよくない、というリイナの判断も正しく思い、それ以上は何も言わなかった。谷を見つめ、さてどうしたものかと考え始めたところで、一匹のフライゴンが谷へと飛び出した。大きな翼は吹き上げる上昇気流をものともせず、体がぶれることなく対岸へとたどり着く。そのまま宝の在処へと下降し、右手で箱を掠め取った。それを固く握ったままこちらに戻り、持ち主に渡す。あっという間の綺麗な飛行だった。
『私も映像で見ていましたが、まるでコンテストを見ているように鮮やかなゲットの瞬間でした! ポイントは百五十点。獲得おめでとうございます!』
 その手際の良さに周囲からも拍手が起こっていた。最後に華麗なフライゴンを見ることができて満足し、それぞれがヨシノシティの会場に戻ろうと引き返そうとする。その中で隣のリイナが首を傾げた。
「あれ……? 終了の合図がまだ来ない」
「え……?」
 言われてみればそうだ。このエリアの宝物「岩崖の上」は既に取られたはずなのに、イベントが終わっていない。つまりそれが意味するのは。
「「まだ宝物がある‼」」
 カズヤとリイナの声が重なる。
 いち早く見つけたのはレントラーだった。先ほどのリイナと同じく声に出やすい性格なのだろう。視線を固定させると、小さく鳴き声を漏らした。
 その先、対岸の岩崖のさらに奥。ここより標高が二百メートルほど高くなった岩崖の上にそれがあるらしい。
 オンバットと目を合わせ、意志を固める。
「頼んだ、オンバット!」
 力強く頷いて、オンバットが谷へと飛び出す。宝に向かって一直線に――そう行きたいはずだった。しかし下から吹き上げる風が強く、オンバットの体が風に煽られてしまう。体勢が大きく傾き、オンバットの視界が逆さまにひっくり返った。青空と大地がぐるぐると混ざり何が何だかわからなくなる。いつしか翼も止まってしまい、真っ逆さまに落ちてしまうのをオンバット自身でも感じていた。
 その中でカズヤの声が響いた。
「オンバット! 頑張れ!」
 声が聞こえた瞬間、胸の中に炎が灯るような温かい心地がした。宝物を手に入れて、カズヤと一緒に喜びたい。この翼でそれを運びたい!
 そう強く願い、オンバットは口に入れたふしぎなアメをがりっと噛んだ。その瞬間――。
「オンバーン……!」
 大きな翼を持つオンバーンの姿がそこにあった。オンバーン自身が驚いたのもつかの間、翼を振り体勢を立て直す。吹き上げる上昇気流を自身の味方にして、流れるように岩崖の頂上にある宝物を掠め取った。

『おめでとうございます! 実は最後にもう一つだけお宝があったのですが、それを見事獲得したのはカズヤ&オンバーンペア! 百七十五点獲得です!』
 戻ってきたオンバーンがカズヤに箱を差し出す。中に入っていたのは得点を示す紙と、
「おうじゃのしるし、か?」
 王冠を模した道具が中に入っていた。カズヤはそれを手に取ると、笑顔を浮かべそれをオンバーンの頭の上に被せた。
「最高だったぞ、オンバーン!」
 オンバーンの歓喜の鳴き声が渓谷に響き、イベントは幕を閉じた。

「大会参加おつかれさま。初めてのスコアトレジャーはどうだった?」
 イベントの表彰式後、会場の出口でカズヤとリイナは話していた。
「すっごく楽しかった! こんなイベントがあるの、今まで知らなかったのがもったいないぐらいだ」
 イベントの興奮冷めやらぬまま語るカズヤの様子に、リイナも笑顔だった。
「そう言ってもらえると、このイベント参加を続けてる私も嬉しいよ。もっと参加者数が増えたらもっとアツくなると思うわ。それでも賞を譲る気はないけどね」
 見事準優勝を果たしたリイナが、両手に提げた商品の紙袋を持ち上げてにっと笑う。
「俺だって今度はオンバーンといい順位まで行ってやりますよ。な、オンバーン」
 オンバーンもそれに同意し翼を大きく左右に広げた。そんなオンバーンの肩をリイナは撫でる。
「最後、宝物に向かって飛んでいくのすごくかっこよかったわ。またそんなのが見られるのを私も期待しているわ。次はエンジュシティで行われるらしいから、興味があったら来てみて」
 そう誘うとリイナとレントラーは、次で待ってるわと言って去っていった。
 参加するイベントが決まり、カズヤとオンバーンの胸は、今から楽しみでいっぱいになっていた。
「よしっ、じゃあオンバーン。宿まで走って帰るか!」
 考え協力し、宝を見つけ喜び合う。今日だけで得られた熱と喜びは、冷めそうになかった。